せまい脳内行ったり来たり/放浪編

もはや主にTwitterのまとめだったのに、2018年9月で途絶えている…。

レディースコミックだからこそ

 ↓の清原なつのの本をアマゾンで探していて、ヘンな寄り道をしてしまいました。十年位前のマンガかな?「闇の果てから」っちゅーのがありました。作家は「セブンティーン」世代には絶大な知名度を誇る(って、いったいいくつぐらいだろう?)、レディースコミック読みにはまだまだ現役の津雲むつみ。題材は、こう言うとなんですが酒鬼薔薇聖斗事件で影が薄くなった感があるM事件です。
 幼児期に兄の担任から性的暴行を受けた過去があるヒロインは、そのせいで極度の男性恐怖症に陥り、二十歳を過ぎた今でも男性に接触されると吐いてしまう症状があるために就職にも生活にも支障をきたしている。その彼女が早朝の犬の散歩中に明らかに性的暴行を受けた上で殺された幼い少女を発見し、事件と関わるうちに自分の過去と向き合っていくことになるというのがあらすじ。はっきり言って画期的なマンガ的表現があるとか、事件に対する斬新な掘り下げがあるとか、そういう作品じゃありません。全体にステロタイプと言われればそう。無難にまとまってるだけと言えばそう。
 だけど、あんまりマニアックに突っ込みすぎてない、エンタメ(と言うには重過ぎるテーマではあるんだけど)として落ち着いてる出来だから、コアなマンガ読みじゃなくても手を出しやすい仕上がりになってると思う。
 当時、講談社漫画賞を受賞してるんだけど、題材と発表誌と手堅いけど地味な作風ゆえにあっという間に忘れ去られたような。覚えてる人も少ないかも。でも、最近未成年略取とか、猟奇でも特殊でもないけれど幼めの子ども目当ての犯罪が珍しくなくなってきてる気がして、啓蒙なんて大げさなことは考えないけどこういうマンガの存在価値ってあるんじゃないかなあと思いました。オーソドックスな分、テーマの割に入りやすいマンガだから。
 それで、できれば(そういう要素が全くない方でも)男性の方により読んでほしいなと思ったりもするのだけど、これは無理だろうなあ。元がレディコミだからなあ。幼い頃に(男性の判断からすれば)ちょっと触られたという体験であっても、女性にとっては深刻な問題としてずっと残るんだよ、ということがわかりやすく描かれたマンガなんですが。女性学的な本よりは(フェミ臭も薄いし)読みやすいはずだけど、無理なご相談でしょうなあ。