せまい脳内行ったり来たり/放浪編

もはや主にTwitterのまとめだったのに、2018年9月で途絶えている…。

萌えないアニメ

 日記は書いてませんが、毎回欠かさずリアルタイム視聴してます>「鉄人28号」。福岡では夜中の2時20分から放送なので、10時ごろからちょっと仮眠して放送に備えてます。録画すると安心してどんどん積ん録になっていくんで、「見たいっ!」と思ったものはリアルタイムで見るに限る。
 で、見れば見るほどこれって萌えないアニメですね(笑)。まず女が出ない。レギュラーは高見沢秘書たった一人、しかも彼女は萌えが投影しにくいキャラ造形です。(好みだという方もいるでしょうが、大勢を占めるとは思えず)大塚署長は業務で出るばかりだから、ご家庭の事情がわからないのはそうか、だけど、敷島博士って独身ですか?奥さん、出ませんけど。正太郎くんは中年男二人に育てられたのでしょうか?
 と、まあ、深夜アニメなのに選びようもない女の少なさは「最遊記」並じゃないでしょうか。向こうは故あっての女性率の低さだけど、「鉄人」の潔さはかなり異質です。(「ジャイアントロボ」を見てたら「なるほどねー」でしょうが、これが初今川の人は不思議ではないかと)
 その分、野郎はそこそこの数出るものの、絵柄がああの上親父率がめちゃ高い。女性が萌えるにはテクニックが必要でしょう。唯一ユルめの萌え対象になりそうな正太郎くんがまた、健気でも素直でもない、ちょいナマイキな性格ですしね(笑)。「Gロボ」の大作くんもあんな感じで、だからなのか、やっぱり村雨健次にいじめられてましたけど。「鉄人」の村雨健次は、いくら敬愛する兄貴を亡くしたからって、ちょっと大人げねえんでないの?って気もしますが(笑)。
 メカもクラシックな横山調を正確に再現してるから、レトロデザイン好きでないとメカ萌えも難しかろう。(その筋の人はたまらんでしょうが)
 全般にとっつきやすい「萌え」という入り口が見つけにくい作品だけに、TV番組的な成功が得られるかどうか、余計な心配をしてますが、放送時間が放送時間だけに「成功」なんてものは端から眼中にないかもしれず。
 その代わり、燃えはあります。いい意味で青少年向きの正統派冒険活劇を見てる感じ。最近は活劇の主役がもっぱら女の子になってきてる分、この野郎率が高く妙なヒネリを効かしてないアニメはロートルアニメファンに安心感と満足感を与えてくれます。
 話も今川ケレン節のおかげで楽に見られるけど、中身はかなりキツくてしんどい。一度も会うことなく死別した父の愛を、廃棄された兵器という形でしか確認できない正太郎くん。その形見といっていい鉄人は魂を持たず、操縦者の意図しだいで正義にも悪にもなってしまう。そこに父の意思を読み取ることが困難だから、正太郎くんは悩まなければならない。「仕方がなかったんだよ」という言葉でしか振り返れない戦争という過去を持つ敷島博士と大塚署長。兵器を憎み、それゆえに鉄人を破壊することを望む村雨健次は、無力ゆえに戦勝国アメリカの悪や軍と手を結ぶ。
 戦後復興の明るさの影の、尾を引く戦争の陰の重さ。
 特に第七話「悪の手先 鉄人暴れる」のスリルサスペンスが村雨に投げたセリフの重さにはぞうっとした。戦争に負けるってことがどういうことか、ここ十年、いや二十年ほどのアニメでこれほどストレートに語られたことってないんじゃないでしょうか?
 戦争という過去ゆえに、大人たちは胸を張って子どもに正義を説くことはできない。それでも「よくあってほしい」と願うから、自分の志だけは誠実に語ろうとする。
 鉄人がほんとに「いいも悪いもリモコン次第」の存在なのに、時に戦いで変形し時に炎で影を濃くして、対する人間の内面を絵として表現してます。これが演出の妙?
 おもしろいんです。おもしろんですが、キャラ萌えでもなくきっちりした今川ワールドで構築されてることもあって、ハンパに作品と遊ぶサイトをやろう!とか思えないですねー。やっても感想書いたり、考察したりが精いっぱいでしょう。ごっつマジメ系にしかやれない。

 ところで相方が原作の鉄人マンガ(秋田書店デラックス版)を持っていたのでぼちぼち読ませていただいてますが、
 これはもー、今時のマンガを読みなれた人間にはむっちゃくちゃ読みにくいですよぉおー(涙)。
 横山せんせのデビュー極初期の作品なんで、絵柄もまだ洗練されてないし、当時のマンガらしく、登場人物が四六時中状況説明的なセリフを吐きまくりだし。すごい流れをつかみにくい。
 話も(たぶん、奇をてらうためではなく)予想もつかない方向へどんどん転げていったりするけど、基本的には勧善懲悪なラインで。(不乱拳博士って、原作ではすっぱり悪人なのかよぅ)
 今回のアニメ化は、ビジュアル面はともかく物語は原作に忠実では絶対になくて、鉄人を含む昭和三十年代を素材にした「今川」アニメですねえ。私的にはそれで全然OKですが。ぜひこの調子でがんがん作家性の強い作品作りをしていってほしいです。

 ネットで「鉄人」の感想をたどっていっていたら、今川さんが某大学でやったらしい特別講座のレポートを見つけました。おもしろかったんで(後、製作裏話が涙)トラックバックしてみました。
 鉄人、DVD一回目は特別仕様二話入り2,800円になるらしいので、絶対買いますわー。