せまい脳内行ったり来たり/放浪編

もはや主にTwitterのまとめだったのに、2018年9月で途絶えている…。

「スチームボーイ」、見ました

 まー、聞いてくださいよ、奥さん。夏休みももう終わりとなれば上映もそれまで。暑くて会社引けたらすぐ帰りたい症候群だったけど、夕方はそこそこ気温も下がってきたし、八月最後のレディス・デーだし、ここで行っておかなくちゃなあと重い腰を上げたんですわ。そしたら、「一番狭い劇場ですけど(それはわかってた)、前の方の席がいいですか?後ろがいいですか?」と聞かれ、後ろってどんな席ですかと尋ねたら「壁から二つ目か、一つ目か、そういう場所です」だそうです。眼精疲労頻発の私は目を守りたいので、やむを得ず後ろを選択。
 上映まで40分以上あったから、夕飯と取り急ぎの補充ものを買ってこようとまずドラッグストアに行けば、私の並んだレジだけ異様に処理が遅いし、ロッテリアでチキンセット頼んだら「五分お待ちいただけますか?」って言われるし、しょうがないから待ち時間にお手洗いでもとロッテリアの客席フロアに上がったら、これまた使用中の上に出てこないし、やっと降りて「もう五分経っただろ?」とカウンター見たらまだ出来てないし、ありがちなタイミングの悪さが積み重なる始末なんですよ。
 さらに小走りで劇場に到着して、予告編の間に食事済ませなきゃ!と焦って食べてたら、チキンのドラム部分がもんごり落下するしーーーー!
 私がいったい何をした。
 そういう様々な不幸もありましたが、劇場は前も後ろも十列もないような広さで。壁から二つ目だろうと全然問題ありませんでした。

 前振り、長いな。
 「スチームボーイ」、封切り直後から様々な映画サイトで酷評を読み続けてきたので、さして期待もせずに見に行きました。(最近、こんなんばっかや)なんで劇場に行ったかというと、画面密度が高いと聞いたので、レンタルDVD&家のTVという組み合わせでは細部がつぶれちゃうなあと思ったから。
 あのー。正直言いますが、そんなにヒドいですか?コレ。普通に少年の冒険活劇ですよね。斬新じゃないけど話に大きな破綻もないし、適度に手に汗握れるシーンもあるし、会社の帰りに見るのは適度な重さでした。鈴木杏小西真奈美の演技もそれほどひどいとは思わなかったなあ。深夜にやってるアニメの声優に比べたら全然真っ当じゃないですか<比べるレベルが違う?皆さん、評価眼が相当厳しい。これより酷評すべき作品は、他にたくさんある気がするけど。
 つまりは「大友ブランド」ってのが大きいんだろうなあ。大友克洋presentsである以上、越さねばならぬと世間が求めてるハードルがあって、「スチームボーイ」は完全にそれを越してないと。それが酷評に繋がってるんでしょうね。散々待たせといてこれかい、みたいな。
 でも、こないだ深夜に「AKIRA」の映画版をやってるのを見たり、脚本参加した「メトロポリス」を見たりして、私の中では大友克洋に対する過大な期待というのはほとんど無くなってまして。むしろ「ストーリーを『魅せる』タイプの作家ではなかったよな、最初から。どっちかというと、画面密度の濃さ、情報量の多さで圧倒する人であって」と再認識して行ったから、「スチームボーイ」のレトロメカシーンの熱の入り方は、正しく大友作品だったような気がします。
 最新か、もはや過去か。「スチームボーイ」を語る評には「いまさら」感が書かれてることが多いんですが、大友=最先端でなくてもいいと思うし、何が何でもブレインインパクトが必要かというと、そうでないような。先入観なく、親子とかでまったり見たらいいんじゃないでしょうか。少なくとも映像には子供だましの手軽さはないですし。
 ただ、冒険活劇としてはわかりやすい完全な悪役がいないので、終盤でのカタルシスは得にくいです。(メカてんこもりの崩壊だけでご飯が食べられるって人を除き)小学校高学年くらいからかなあ、大人たちにはそれぞれ、オトナの事情や主張があるんだとわかるのは。それは製作側も承知みたいだけど。スチム一家といい、スチーブンスンサイドといい、メインのたちは概ね科学にヤラれててて、その点では同じ地平に立ってるからいいとか悪いとか言いにくいのね。
 ヒロインのスカーレットがすげー性格で、いや、大人は実はかわいいんだとわかるけど、子どもにはきっついオンナって感じでしょうな。エンドロールでさりげなく語られてる後日譚、この事件をきっかけにレイはスチームボーイとして様々な事件で活躍するってことなんでしょうか。ロケッティアみたいに?あそこに出てくるスチームガール(?)は将来のスカーレットなのかな。数年後と思しき彼女の肖像がいっかにも大友顔でおかしかった。アメリカ人なのに(笑)。