せまい脳内行ったり来たり/放浪編

もはや主にTwitterのまとめだったのに、2018年9月で途絶えている…。

全員負けてる

 芸術の秋!
 なんて力説する時点でかなり胡散臭いわたくしの芸術度ですが、本日のビッグイベントは本当に「芸術!」なのです。山鹿の八千代座で坂東玉三郎の舞踏公演を見るのです。私には高尚過ぎて目がつぶれそう。
 器の小さな八千代座は舞台までの距離が近く、演者の方の手先の動きまでかっきり見える贅沢な環境。昔ながらの桝席や二階席も風情があり、和風な演目を鑑賞するにはこの上ない場所と言えるんですが、いかんせん席数が限られるので人気の演目のチケットはもんのすごい入手困難。そんな希少価値のチケットを、基礎知識もないまさに猫に小判な私たちが手に入れていいのか?しかも鑑賞動機が夢枕獏が作詞をした「楊貴妃」が演目にあるから、という低レベルのもの。他のお客さん、ごめんなさい。ってーか、私たちの他に夢枕獏の名を知ってそうな観客があまりいそうにないんですけどー。
 昼前に稀少品のチケットを確保してくれたYさん、アレ知人のSさんと合流。途中「大砲ラーメン」という久留米ラーメンの店で昼食。これが私の一番古いラーメン記憶とぴったり合致するなつかしい味のラーメンで。(子どものころ食べてたラーメンが、まさにこれ系の味。ですよ!>makiさん)おかげで「実は私ってラーメン苦手だったんだ!」という事実を思い出しました(爆)。骨まで煮込んだとんこつスープで油酔いして気分が悪くなるのです。
 というなつかしの味を噛み締めて、一路会場のある山鹿へ。車内ではなぜか、今話題の映画「デビルマン」で大盛り上がり。誰も見てないのに。あまりにかっとんだ出来栄えに、秀逸なネット評が続々登場してるもんだから、ネット利用率の低い二人に高い二人がそれを紹介しているだけでどんどん時間が過ぎる。(ちなみに、「CASSHERN」は全員見ていた)人間、ねじれる方にばかり人生の時間を使ってはいかんだろうと思う。
 現地にはゆとりで到着し、会場周辺をぶらつく時間まであった。晴天に恵まれたせいか十月下旬とは思えない暖かさ、というか、暑いくらいで、被災した上に寒さに震えている人が同じ日本にいるのにのほほんな休日ですまん、という気分。会場に続く道は私よりもさらに年配の女性ばかりが歩いてる。私たちのように男女半々は珍しい。やっぱ歌・踊り・芝居の類って男性には縁遠い世界なんだろうか?時間がない?(でも、ゴルフやパチンコには行くよね)入り口で靴入れのビニール袋をもらい中に入ると、二階席まである割には低い天井に昔の看板がいっぱい。あれって今ある店のじゃないよなあ。電話十六番って、どこにかかるねん。
 さて、肝心の内容ですが。言うまでもなくそんなもん、私の文章なんかで表現できるわけがない。自分の文化的貧困にあきれるくらいです。演目が読み込めない基礎素養のなさも問題で、お子様並に「わー、わー」と見とれてるうちに時間が過ぎる。全ての動きがなめらかで流れるようで、でもびし、と決まるときは決まって、指先までに何かがこもってる、そんな動きをする人間がこの世にいるなんて!ですよ。それが肉眼でばっちり見えてしまうような劇場で鑑賞できるなんて!ですよ。
 ああ、この清楚で美しく品のある女性が、実は五十過ぎのおっさんだなんて。(玉三郎のファンに怒られそうな言い方ですまん)会場九割方女性でしたが、立ち上る品性、所作の美しさ、動作の精細なこと、全ての点で女性として全負けです。完敗です。ぱんつ見えてもへーきでガニ股歩きする、語彙の少ない今時の娘さんなど論外です。
 この国の美しい女性のあり方、立ち居振舞いのきれいさなどというものは、伝統芸能の世界にしか残らないのかもしれないですねえ。とゆーか、この美しさがもう理解できない世代すらいるのかも。