せまい脳内行ったり来たり/放浪編

もはや主にTwitterのまとめだったのに、2018年9月で途絶えている…。

「スカイキャプテン」、見ました

 まともな映画ファンからはきわーな評価が出ている模様の「スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー」を見てきました。今週末で上映終わりなんで、最後のレディスデーになんとか滑り込み。東宝は全面的に「ハウル」モードでチケット売り場も「ハウル」か「ターミナル」あたりを所望する人が多い中、迷いもなく「スカイキャプテン」(笑)、同じフロアの大劇場では満杯の客を押し込んだハウル上映してるのに、敢えて一番小さな小屋の「スカイキャプテン」。なかなか自虐的な気分です。

 これ、今年の初め頃に予告編見たときから「見たい」モードに入ってて、評判が低なのを知ってからもわりと意欲が持続してためずらしい映画です。で、感想ですが、おもしろかったですよ。全方位の皆さんにお勧めできる作品じゃないけど、私は千円分きっちり楽しみました。CGでいじりまくった画面なんで、劇場の大きなスクリーンで見たのもマル。活劇ものは、やっぱスクリーンでしょう!って気分で。
 話はオーソドックスでクラシックなヒーローマンガそのもの。フォーマットは「レイダース 失われたアーク」と同じようなもんです。インディよりスカイキャプテンは世界的に知名度が高いヒーローみたいなんですけど。
 この「みたい」の部分に引っかかるか引っかからないかで、スカイキャプテンが楽しめるかどうかが決まるようです。映画評で低を出してる人は概ね「スカイキャプテンがどういう人かわからない」「なんであんな大きな組織を持ってるんだ?」「複葉機が無補給でアメリ東海岸からネパールに行けるって、ありなの?」「世界の危機だってのに、対応に動いてるのが少人数。世界状況がさっぱりつかめない」といった疑問を呈してて、結果「物語に入れない」「話が煩雑すぎて見てられない」といったマイナス評価に流れていってます。
 話の作りに対するこの意見はみんな正しい。だから、これを読んで「えーー?」と思う人は「スカイキャプテン」を見るには向きません。この映画を「おもしろいじゃん」と言えるのは、初めて出会うヒーローだってのに全く世界観を説明しない、その部分をヒーローもののお約束で補完して「あー、あれね」「と言う雰囲気で理解すればいいのね」と了解できる人。そして、「こういうのってかっこいいよね!」と映像に満足できる人でしょう。
 そもそもが個人がガレージだかで六分間作ったパイロットフィルムが二時間の映画に大発展した際物。新人マンガ家の投稿作に惚れ込んだ編集さんが「こいつに連載させたいんだけどさあ」とデスクに掛け合い、「とりあえず十週分の連載で」と企画を決めてしまい、本人「ええー、十週分もどうやって話持たせるのーー?」と冷や汗かきながらエピソードつないでなんとかやっつけました、みたいな、そんな出来のものを想定していただければよろしいかと。
 じゃあ、これが全くつまんないかってーと、欠点多いけどこれはこれでおもしろいじゃんと言える部分もあるわけで。
 何が楽しいって、全体に頭が30年分くらいタイムスリップできること。ヒーロー像とか物語の骨子とかデザインとか世界とか、そういうのが昔読んだ・昔見たマンガそのもの。(実際にはもっと昔の作品だったりするけど、私の体験年齢がそのくらいの頃だってことで)そのトリップを可能にする画面の雰囲気。いわゆるレトロフューチャー。ばかばかしいほど徹底されたメカや町の風景に対する監督の好みがなかなか快です。なんたって、カッコかわいいもん。全体が。キッチュで、でもモダン。
 キャラクタにもそれが反映されてて、グウィネス・パルトロウ演じる女性記者のポリーなんか、昔の少年マンガのヒロインってこんなだったよね!っていう。気が強くて無鉄砲で、その上役立たずでトラブルメーカーだったり。で、記者。ロイス・レーンを引くまでもなく、職業は記者でしょう。もちょっとかわいいとこがあったりするとよかったんだけどなあ>ポリー。
 ポリーがオトボケを引き受ける代わりに出てくるのがアンジェリーナ・ジョリー演じる女性士官のフランキー。これは文句なくかっこいい女ですわ。出番少ないのが残念だけど、これ以上出るとポリーの立場ないから。
 で、スカイキャプテンですけどね!私、いい男って嫌いというか苦手だけど、今回に限りジュード・ロウいいなと思いました(爆)。かっこいいヒーローをちゃんと背負えて、ポリーとのやりとりではちょと浮気なんかしたりするけどお子様っぽい純情も持ってて、ってキャラが、無機的でCGのソフトフォーカスかかりまくりの画面ではジュード・ロウにぴったりです。(しかし、ジュード・ロウって薄毛のイメージが日本では定着してるのね。私がスカイキャプテン見に行くって会社の子に言ったら、「ああ、頭が危ない人が出てる映画ですね」って返されますた)
 女のお子さん魂をお持ちの方には、このスカイキャプテンとポリーのお子様じみたやりとりがカワイイ!でよいですよ。カメラを巡るエピソードとか、めっちゃかわいい。今どきの日本のマンガでは、こんな話はやれません。
 役者の皆さんも、このどこまでもあほらしいほどにマンガちっくな映画を楽しそうにやってくださってて、それもいい感じ。
 というわけで、つっこみどころは満載だけど心は素直に子どもにトリップできる、贅沢な娯楽映画「スカイキャプテン」、映画にエモーションを要求しない方、かつてのマンガ少年・マンガ少女にお勧めします。いやー、楽しかった!

 デジクリの「MKチャット対談」で「スカイキャプテン」を取り上げてるのが、一番私的に「そうそう!」と思った感想でした。