せまい脳内行ったり来たり/放浪編

もはや主にTwitterのまとめだったのに、2018年9月で途絶えている…。

「恋文の世紀」

 去年、NHKBSで放送して録画しっぱなしにしていた「恋文の世紀〜あの人にこんな恋があった〜」を見る。私にしては珍しいもの見てますが、タイトル後半の「あの人にこんな恋があった」の部分に興味があって。へえええーと言えそうな内容かなー、と。<対象がなんであれ、トリビアテイストが好き。
 東西の有名人が残した恋文を朗読劇みたいな形で紹介するという趣向で、取り上げられているのは、1.エディット・ピアフとマルセル・セルダン、2.斎藤茂吉と永井ふさ子、3.アルバート・アインシュタインとミレーバ・マリック、4.ロナルド・レーガンとナンシー、5.チェーホフとオリガ・クニッペルの五組。二人の関係はそれぞれ違い、ピアフと茂吉は不倫、アインシュタインは最初の妻、レーガンは妻、チェーホフも妻なんだがこの二人は別居結婚だったそうで普通の夫婦とちと状況が違う。
 一番感動的なのがピアフとセルダンの恋文で、不倫なんだが二人ともすごく真摯でなんちゅーか、切ない。セルダンは結果奥さんと子ども三人を裏切ることになってるんだが、自分の恋を一方的に正当化はしていない。ピアフも相手の嫁と子どもはどうでもいいとは思っていない。裏切った家族に心を残しつつ、でも気持ちが引かれるのをどうにもできない、社会と自分たちをきちんと認識してるのだ。ピアフはセルダンに出会ったことで、自分に生きていく価値を見出したとまで言ってる。そして、お互いの仕事や精神性を高く評価している。この人たちは恋愛で成長してるのだなあ。どろどろと醜いこともあっただろうけど、「でも、恋愛っていいもんだ!」と思わせる逸話です。途中で相手が急逝してしまったから美しい話で終わったのかもしれんけど。
 斎藤茂吉は養子先の娘を嫁にするのが十代のころから決まってる人生だったせいか、50代で24才の美貌の歌人見習い(?)と大恋愛。奥さんとうまくいってなかったりスキャンダル起こされたりしてて、よけいにのめり込んだのやも。執着心や狭視野っぷりはすでに世間で大家として知られていた人とは思えないけど、恋愛ってそういう側面があるもんですからねえ。でも、ふさ子さんは茂吉と別れた後も生涯独身を通したそうで、若い娘さんの人生に配慮してあげる余裕もほしいかなと思いましたです。
 後、印象に残ったのがレーガンが奥さんに送り続けたラブレター。結婚してからもですよ!しかも、すっごいべったべたの甘甘。「恋愛」や「結婚」に関するとらえ方が欧米と日本では違ってはいるものの、それでも日本のおじさん世代は「古女房にこんな手紙を?」と信じがたい気分になりそう。レーガンさんは十年ほど前にアルツハイマーを発症し、なくなるころには奥さんのこともわからなかったそうだけど、金婚式を迎えた2002年には前もって準備しておいた手紙で妻に感謝を伝えたのだとか。アメリカ人、やるな。奥さんは残されたたくさんの手紙を読み返すことでしあわせな日々を思い出せると言っておられるそうです。レーガン政治家としてはアレだが、ダンナとしては最強かもしれん。

 メール全盛にシフトした昨今、もう紙に書いた手紙は死滅に向かっているのかもしれないけど、後で読み返して思いにふけれるのは紙の手紙のような気がする。最初からメール世代はそうでもないのかしらん。でも、なかなか相手に届かないまどろっこしさは、あれはあれで風情があったような。