せまい脳内行ったり来たり/放浪編

もはや主にTwitterのまとめだったのに、2018年9月で途絶えている…。

アメリカのすごいばあちゃん

Amazon.co.jp: 本: ターシャ・テューダーのガーデン

 日本でターシャ・テューダーと言えばガーデナーとしての方が有名なんでしょう。草木に無頓着な私がこの知る人ぞ知る高名なおばあちゃんのことを知ったのは、大勢のコーギーが暮らす村を舞台にしたコーギービルシリーズという絵本を通じてです。この方、アメリカではたいへん人気のある絵本作家でもあるのだそうです。

 そのターシャ・テューダーの庭を紹介する特集をNHKBSでやっておりました。「喜びは創りだすもの〜ターシャ・テューダー四季の庭」でございます。ターシャおばあちゃんの住むバーモント州は年の半分は雪に覆われているけど、四季の移り変わりがはっきりしていて自然を満喫し草木を慈しむには最適とご本人が選んだ土地。そこになんと30万坪の庭を造り、御年90歳になってなお一人暮らしをしつつ手入れをしているのだそう。
 30万坪ですよ。東京ドームのざっくり20倍。その手入れをほぼ一人でやってる。
 歩いていける距離に息子さん一家が住んでいて、力仕事や買い出しや身の回りのあれこれをまかなってくれているそうだけど、庭をどうするかに関しては、完全にターシャさんが決めて指揮して実作業も率先してやってる。このあたりにどんな木々を植えどんな花を咲かせるか、そのための土作りはどうするか、全てが数年単位で結果を出していく作業。しかも自然任せだから思った通りになるとは限らない。いい庭を造るには少なくとも12年はかけないと(だったか)とすらりというおばあちゃん。すぐに結果が出ないと焦ったり不安になったりしがちな私など、「すいません、辛抱足りなくてすいません」と謝りたくなるお言葉の数々。
 気が遠くなるような作業は庭の手入れだけじゃないのです。ターシャさんはイギリスから移民してきたころの曾祖母時代の暮らしをなるべくそのまま取り入れていて、電気やガス、水道を必要最低限しか使いません。ローストチキンを暖炉でいぶりながら作るのに四時間かけるのを厭いません。秋のうちにミツロウを溶かし、孫たちの手伝いを得て千本のろうそくを作る(ミツロウ入りの樽に糸を何度も浸して!)、それと暖炉の明かりで冬を乗り切るって言うんだから筋金入りです!
 夏は一日庭仕事。飼っているニワトリや鳩の面倒をみて、夕方日記代わりのスケッチを一つ仕上げる。長い冬はろうそくの明かりの下で夏に描き貯めたスケッチを元に絵本の創作をする。
 赤毛のアンとか、あの時代の北米の暮らしがコーギーコテージ(おばあちゃんの家の名前)周辺には未だリアルに存在してるのです。

 すごいなー、と思う。ある意味理想郷。でも、だらけた私には絶対できない。

 しかも、この暮らしはターシャさんにとっては念願だったわがままな生活で、最近は年を取ったせいで「少し怠けてる」っておっしゃるんですよう。私なんかいったいどうすれば。
 自然を相手に暮らしているターシャさんが何度も言うのは、「この美しい世界を見られるだけでしあわせ。それを楽しまないなんてばかげているわ」。
 工夫して努力して失敗して、やっと見られる花々や緑を慈しむことで最大の楽しみを得られる人生観って、いいなあと思った。(この暮らしを実現しているのは絵本作家としての成功がもたらす経済力なんだろうけど、それだってご本人の力で得たものだしなあ)
 私は何がないと言って不満垂れてるんだろう。

Amazon.co.jp: 本: コーギビルの村まつり

 ターシャさんのコーギーを主人公にした絵本シリーズより。昔から何匹もコーギーを飼ってきたターシャさんの今の相棒はメギー。雪深い土地に暮らしているせいか、家のばかぼんと比べるとかなり毛足が長くぼふぼふした子でした