せまい脳内行ったり来たり/放浪編

もはや主にTwitterのまとめだったのに、2018年9月で途絶えている…。

ルパンとルブラン

 NHKBSの番組ばかり見ててすまん。「見たいな」と思うものが最近そっち流れなのです。
 で、今回は「時の旅人 ルパンに食われた男 モーリス・ルブラン」というのをやってまして。ホームズ.vsルパンでは圧倒的にルパン派だという豊川悦司が、でも著者のモーリス・ルブランのことは全く知らないというのでおフランスまで取材に行くという番組。なんだかもー、全編に「ルパン三世」のトリビュート・アルバムがBGMとして使われ邦題なんですけど!いいんですか?>NHK。
 ホームズ.vsルパンでは断固としてホームズ派だった私は、当然モーリス・ルブランのことは知りません。番組見てたら、なんかかわいそうというか、ルブランの気持ちが「わかる!」という売れっ子作家・マンガ家さんがたくさんいそうな。
 ノルマンディー地方の裕福なご家庭に生まれたモーリスくんは、家業を継いで欲しいという父親の希望を振り切って作家になるべくパリへ上京。(「パリへ上京」という表現はありか?>自分)ルブラン青年があこがれていたのはフロベールとかモーパッサンなどの純文学の方々で、自身も観念的な小説をあれこれ書いてはみたものの鳴かず飛ばず。パリへ出て20年、生活に困窮していたときに世話になっていた出版社の人に乞われて小金稼ぎに書いたのが「アルセーヌ・ルパンの逮捕」、これがヒットして単発ものののつもりだったルパンシリーズを書き続ける羽目に。
 ほんとは純文学で行きたいルブランにとって、ルパンを書くのは尊敬する先輩作家への冒涜みたいで気が乗らない。その上、世間は作家の自分のことなど全く知らないままルパン物語を読む始末。自分はルパンの影にすぎないと一時はルパン鬱、ルパンノイローゼ状態に陥っていたそう。ルパンを書くという行為を肯定的に考えるようになれたのは、一作目を手がけてから実に三十年が経ってから。ルブランにとって、ルパンは長らく重荷でしかなかったそうなのです。
 人気キャラ・人気シリーズを生み出してしまったがためにずっとそれに縛られるって、今の作家・マンガ家・役者さんにも似た状況の方がいるもんなあ。
 コナン・ドイルもなあ。ホームズ書くのいやだったそうだし、晩年は変なオカルト方面に旅立って行ってしまったし、人気稼業にこの悩みはつきものなのでしょうか。

 そんな、かつては作者ルブランを食ってしまったルパンも、現代日本ではすっかり孫に食われきってます。ルパン記念館みたいなとこの係員の方が、「今のフランスでは、若い人はルパンを知らない人が多いのです。日本の方がよくご存じかも」と笑ってらっしゃいましたが、知ってる言うても孫の方ですから…。
 フランスでは、ルパンは学校に置くにはふさわしくない本ってことで、長らく図書館には置いてなかったそうです。ええー!わたくし、ポプラ社のやつをがっこの図書館で読みましたのに。もちろん、南洋一郎氏の訳のやつです(笑)。