まだ大藪晴彦はアリなのか
今週のNHKBS2は角川映画を延々やっていて、そのうちの一本「蘇る金狼」を相方が見ていた。松田優作が主演してるやつで、何年か前香取慎吾で土曜の連ドラでもやっていた。
大藪春彦というと車とか銃とかの描写をマニアックに書き込んだハードボイルドっぽい小説をかく人という印象がある。実は何作か読んでみたこともあるけど、ぶっちゃけ出てくる出てくる女、どいつもこいつもモノでしかなく、女性が読んでもあんまりおもしろくもない。完全に男向きのエンタメ小説という感じ。(女豹シリーズという女主人公のものもあるけど、レズビアンという設定で精神的には女というより男)もっとも、あのページから吹き出してくるようなマッチョな雰囲気は、今時の若い男性に受けるんだかどうだかわからんけど。
そんなわけで、原作がそういうものだから映画にもそれほど興味も持てず相方が見てるのを通りすがりに眺める程度だったんだが。この、昼間は七三分けでサエないサラリーマンだけど、プライベートでは革ジャンで肉体派な男という主人公の雰囲気はまるで特命係長。というか、たぶん特命係長が大藪の主人公をちょっと意識してるのかもしれないと思ったり。(やってることは真逆と言っていいけど)
この手の作品を小説なり映画なりで観ると、女性にとってハードボイルドってのはむずかしいジャンルだなー、と思う。うまく作られているものは男のダンディズムとか孤独とかを感じさせて、「女には立ち入れない世界があるのねー」とロマンを感じさせてくれるんだけど、ちょっとサジ加減を間違えたものだと「自分たちだけ浸ってんじゃねーよ」的な陳腐さが漂ってしまう。ナルシーさばかりが目について、いいわねー、男はお気楽で、みたいな。和製のこの手の映画はどうしても後者になりがちで、遠いところから眺めているしかない気分になってしまう。
しかしこの映画を見てひとつだけ「をををっ」と思ったのが。
松田優作が会社でそろばん使っている!
この時代、まだ電卓すらオフィスではそんなに行き渡ってなかったのか? 単にサラリーマンとしての主人公が影の薄い存在であることの暗喩としてそろばん出したのか? 謎です。1979年頃の会社の備品ってどんな感じだったんだろう。