せまい脳内行ったり来たり/放浪編

もはや主にTwitterのまとめだったのに、2018年9月で途絶えている…。

阿修羅を見に行きましたよ


九州に夏が来ました... orz。

 このところ日記も書けない日々が続いていて、と言うのも、例によって例のごとく夏バテ絶好調で脳みそが文章を作れないからなのですが、しかしどうしても阿修羅像を見に行きたかったもんですから、盆休みの代わりに一日有給を取り出かけてきました。
 何しろ休日の来館者数一万人、最長で待ち行列が二時間と聞きまして。
 この身体で二時間待ちは無理! それに、平日の朝イチで出かけたら午後死ねるし、土日も死ねるし。<どれだけ身体に対して弱気。
 社会人としてどうか? ではありますが、特別休暇もリフレッシュ休暇もない派遣なので、勘弁してください。

 去年フェルメールを見に行ったときにいただいたアドバイスに従い、今回も朝イチの開館時間を狙って出かけました。出勤時と同じ時間に起きて準備すれば、だいたいその時間に着くはずという目算です。先日までの明けない梅雨空から一転、急激に夏が本気出してきた空模様でニュースでは猛暑と言い張っており、早くも心が折れそうになりますが、今日の決心を翻すともう二度と腰が上がらないのがわかっているので無理無理に家を出ます。会場に向かう電車は通勤ラッシュを過ぎているので年配の方や学生、家族連れが多くのんきな雰囲気。でも、この中には阿修羅狙いの人もそれなりに含まれているはずで、なんとなく心が競争モードに。会場である九州国立博物館がある太宰府駅からはフェルメールの時の上野駅→上野公園のような人の流れで、デジャビュを見ているような気分。そして、エスカレーターを登りきり会場正面に出た瞬間にどーんと目に入ってきたのはすでにとぐろを巻いている行列でした。
 そんなバカな。だって、平日で今開館したばかりの時間でしょ!?
 目論見が外れて思わず膝をつきそうになった時(<おおげさ)、「フィギュア購入の方はこちらにお並びください」の札。ああ、例の大人気海洋堂製の阿修羅フィギュア、今日は売ってるんだ、それ目的の人用の行列なんだ、とほっとしました。フィギュアを買わない人はすぐに会場に入れました。ずんずん進んでエスカレーターを上がり、三階にある「国宝阿修羅展」会場へ。フロアには行列用のロープは張ってあるもののさして並んでいる人もおらず(フィギュアトラップに行列が吸収されたせいかも)、すらっと中に入りますと。
 すでに人がぎっしり。動けないほどではないけども、開場直後とは思えない入り。がつがつ歩いてきた身には、それなりに冷房が効いていても風のない室内、かつ人の多さが発する熱が最初はつらく、どっと汗まみれに。ハンカチを握りしめ、興福寺の所蔵品を眺めつつ奥へ進むとそこに今回の主役、阿修羅像が暗がりの中にピンスポで浮いていたのでした。
 夏バテでへばっていて目がおかしかったのかもしれませんが、妙に現実感がありませんでした>阿修羅像。ライティングの加減なのか、ホログラフィみたいに見えた。質感が薄いというか。
 そして、予想通り阿修羅の周りは人だかり。ライブハウスのかぶりつきの様だ。<どんなたとえ。東京の展示は片面に高低差があるスロープを配していたので後ろからも全体が見えやすかったみたいだけど、福岡はフラットな台座の上に乗せてあるだけだからちびっこが後ろにいると足下がまるで見えない…。しかも人は見たいものの前ではどうしても立ち止まってしまうため、阿修羅正面に分厚い人の壁ができてしまう。
 これを動かすために係員の方がしばらく置きに「後の方のためにあと五歩動きましょう、はいっ」と声をかけて観客を誘導してるんですが。あの人だかりに取り巻かれて大声出してたら一日で相当痩せると思う…。<痩せる前にバテます。たぶん、一時間交代くらいでやってらっしゃるんでしょうけど。
 でも、阿修羅のみならず全展示品、50cmくらいまでの至近距離で見られて、残ってる柄や作りをしみじみ観察できるチャンスは、私の人生ではこれが最初で最後だろうなと思いました。阿修羅を含む八部衆も見応えがありますが、四天王立像もデカい分迫力があっていい感じ。八部衆が静ならこちらは動。木彫りだから出せるダイナミックさが圧巻でした。
 阿修羅ってなんであんなに頭身バランスいいんだろうって不思議でしたが、あれはきっと頭部が三面だからじゃないかと。他の六部衆はみんなちょっと頭が大きいのです。他のと同じくらいの頭の大きさだけど顔が三つあるから一つあたりが小さくなって、結果八頭身の仏像なんてものに仕上がったのではないかと素人心に思ったり。
 
百億の昼と千億の夜 (ハヤカワ文庫 JA (6))

 私がバテきった身体を押して阿修羅を見に行ったのは、SF者として当然のように「百億の昼と千億の夜」の影響あってのことです。他の何に書かれた阿修羅であってもあの話の阿修羅にはなり得ない、唯一の起源である「あしゅらおう」にやっぱ一目会っておかなきゃって思ってしまったのです。
 帝釈天に永遠の負け戦を挑む戦神を、なぜこんな憂いのある少年のような造形にしたのか、現物を見ても不思議でなりません。あの表情の、深い意味を仮託できる仕上がりも不思議。「モナリザ」の笑みを神秘の笑みと言うけれど、青年の苦悩と浄化みたいなものが読み取れる阿修羅の顔立ちの方が日本人の情緒的には好みのような気がする。
 私ごときには結局なんにも読み取れなかったんですが、でも会ってよかったです。「百億」読み直そうかな。


入場行列と物販の人だかり。みうらじゅんの仏像著作が並んでいるのはどうかと...。

 二時間ほど中をうろうろ堪能して出てくると、外の様子が一変しておりました。一階に行列整理のロープが貼ってある。会場へのエレベーターにも進むには制限がかかってる。それどころか、行列は外まではみ出してました。ええー、こんな暑い日に外に行列!?(ちゃんとテント張って日よけは作ってある)熱中症対策用にテントの周りには水気を供給するミストが散布されているのですが、その湿気がむしろもわもわと不快指数を上げてる面もあり、どうしたものかという感じです。
 まだ昼前なのに…。やはり朝イチ攻撃は正しかった。平日でこれじゃあ、週末はどうなってるんだろうと恐ろしくなりました。


一階の行列 エスカレーターに乗る前

 行く予定の方は、とにかく朝早く、です。県外の人が到達しづらい時間に会場にたどり着く。行列の中には日本語じゃない会話も多々含まれていたので、遅い時間になると競争相手は国外にまで及ぶようです。(団体さんが何組もエスカレーターを上ってきてた)フィギュアの販売がどのような間隔で、一回あたり何個入荷しているのかわかりませんが、私が行った日には一通り見て出てきてからもまだ在庫があった模様。「絶対買いたい!」という方以外は、行列の長さによってはバクチ打って先に入場してしまった方がいいかも…。
 人気もんだ、阿修羅像。

 さて、その後ですが、家に着いたら当然のようにヘバりましたとさ orz。


これだけVQ1015で撮ったものです。他のは見切れてる写真が多くて...。