せまい脳内行ったり来たり/放浪編

もはや主にTwitterのまとめだったのに、2018年9月で途絶えている…。

「空気人形」を見ました

 体調は相変わらず今イチだったけど、いい加減上映終了しそうだったので。シネリーブルのスクリーンは何度見ても悲しいほどちっちゃい。シネテリエよりも座席がちゃんと傾斜しているから、前の人の頭で遮られない分よしとしなければ。

 これは大人のおとぎ話。なんだろう。だから、なぜとかどうしてとかどうやってとか考えちゃだめ。考えるような人は端から見に来ないだろうけど。
 あらすじを知ったときからいわゆるハッピーエンドにはならない物語なのは予想できてて、だからいつ空気人形の娘に破綻が訪れるのか、冒頭からはらはらしながら見ていた。最初の頃の、いかにも人形っぽくぎこちなくて子どもみたいな言動が少しずつ変わって、生き生きと楽しげなのが全身からあふれるようになればなるほど。
 ってゆーか、前評判で聞いていたが、監督どんだけペ・ドゥナが好きなんだ! と苦笑したくなるほどかわいく撮ってる。コスプレ服じゃなく、私服(どうやって入手したんだ、なんでこんなセンスいいんだ、てーか、なんでミニばっか?(笑)になってからがまた、無敵に愛らしくなっていく。確かもうアラサーな年の女優さんのはずなんだけど、かわいいとしか言いようがない。美人ではないと思うんだけど、無垢なかわいさがにじみ出てるというか。
 どーってことない大都市の狭間の、間口の小さな雑多な家々の、空き地同然の公園の、人工的に整地された海辺の、それでも切り取るときれいだと記憶される風景の数々。になるのは、空気人形の娘の目を通した世界だからなんだろう。
 ただの「人形」じゃなくて、始めから実用品で代用品として生まれてきた空気人形。持ち主の男もそういう人形なりに大事にしてるし、というか、そういう「人形」なんだからそれ以上どうしろと言われても困るよな。(昔の彼女に対する未練を綴ったブログをそういう人形に読まれるというのも、立場ない)でも心を持ってしまった人形にとっては、その「愛情」ではだめなわけで。
 それにしても、人間もどこか空っぽで彼女と変わりないんだというのはあくまで比喩であって、やっぱり人間と人形は違うから! なんとなく雰囲気で話すから、彼女が鵜呑みにしちゃってあんなことになるじゃないの! メルヒェンな言葉で自分が納得してるんじゃなくて、ちゃんと話してやれよー。
 アリエルが出てくるのはそういう意味だったのかと思った。人魚姫は人魚に戻るために王子を殺すのを拒否して海の泡になったのだけど、空気人形の娘はなんというか…。なんというか…。(ちゅーか、「リトル・マーメイド」はハッピーエンドだ、確か。なんてことだ)

 監督自身、これはえろいはずだと確信を持って撮ったという、やぶれて空気の抜けた彼女の身体に片思いしている青年が息を吹き込んでやるシーンはほんとに切なくてえろい。生なえろよりリリカルで切ないえろがある。
 そして、映画ファンには怒られるだろうけども、「人造人間キカイダー」のアニメ版でジローがミツコに修理してもらうシーンを思い出した。あれも意図的にえろい演出がしてあって、やっぱり切なかった。
 好きな相手に生死をゆだねるというのがえろに通じるのだろうか。

 R-15指定の映画を、そうなんだーと思って初めて見て、なるほどR-15なんだねー(^^;)と思った。一緒に見る相手によってはびみょーに気まずい。<一人で見ました。
 R-15に期待して見に行った二十歳未満の男の子たちは、心のない性の哀しさを空気人形の娘から感じ取るように。

 ふと思い出したけど、去年洋画でやっぱりリアルドールものがあったなあ。と思って検索。
 こっちはハートウォーミングでハッピーエンドみたいです。こっちも見てみようかしら。
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