せまい脳内行ったり来たり/放浪編

もはや主にTwitterのまとめだったのに、2018年9月で途絶えている…。

「ローレライ」と「イージス」

 今年は福井映画年だったわけだけど、興行収益的にはともかく作品評としてはかなり惨敗に近い評判で。「戦国自衛隊」は見てないのだけど、これも評価低そうだ。推して知るべしな感じです。
 小説があのボリュームである以上、二時間の映画で何ができるのか?って懸念はずっとありましたけども。その懸念がモロにフィルムに出ている以上、酷評は免れないだろうなという予想はあったのだけれども。

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 相方が「ローレライ」のDVDを買ってきたので、オーディオコメンタリーを見てみました。これって通常版なんですが、ふつーの人はこのコメンタリー聞いてどのくらい意味がわかるんだろう?と心配になるような濃い会話の連続。いや、ふつーの人はコメンタリーまでは見ないのかしら。二時間も何を話すんだろう?とも思ったけど、さらにあと二時間しゃべらせといてもネタが尽きなさそうな勢いだった。
 コメンタリーで明かされることの中には、人によっては言い訳に聞こえるかもしれない「映画にするにあたって小説版とは変えたこと」があります。そのやり方が合ってたかどうかは別にして、作り手側の意図が見えるのはおもしろいです。樋口さん自身が特典好きだと言うことでサービス満点な映像特典を付けてるのもお得。清永の描写とか伊507から離れていく征人とパウラのやりとりとか、撮ってたけどタイムリミットサスペンスに徹するために削ったシーンに「あー、これあったらもう少しキャラが厚くなったのになー。もったいねー」と残念がったり。
 なんで「椰子の実」使わなかったのか、とか、日本のリセットを目論む朝倉の年齢が作者に近いわけとか裏話が満載です。それを聞いて映画の出来を割り引いて評価するわけにはいかんでしょうけど、あれがああなるにあたってはいろんな紆余曲折があったのだなあと思いました。
 小説版の一つめのクライマックス、任務を達成してローレライシステムを葬るために最後の疾走をする伊507にはダダ泣きなのですけど、あれをエンタメ映画のオチには持ってこれないよねえ…。(長いしね)まして、淡々と戦後を生きる征人とパウラの下りは、文章だからやれる世界ではあろうし。
 それを内包する代替え案を映画で出せるか。プロならば「出せ」って話になるんでしょうけど。配給サイドはエンタメであることを要求している以上、大戦をベースにしたファンタジー・マンガチックな話になっちゃうのは仕方なかったのかなという気もしました。
 原作もようく考えるとそうなんだけど。枚数の力業で説得を試みる作者に気持ちよく負かされますから。

 映画好き&原作好きの酷評の前にはどんぐりの背比べにしかならないでしょうけど、映画としてのまとまりのよさって点で言えば「イージス」の方がいいのかな、というのが私の評価です。誰が見ても比較的見やすい仕上がりになってるんじゃないかと。
 でも、ぐじゃぐしゃのごじゃごじゃの混沌の中に引っかかりを感じるのは「ローレライ」なんですよねえ…。潜水艦そのものから小道具や衣装に至るまでヲタらしいこだわりが満載なんで、DVDでいちいち堪能するにも向いてる。まったくリアルじゃない絹見艦長のレザーコート、かっこいいですもん。征人の制服とかさ。パウラの黒アヤナミな衣装も、マンガ度アップですけどいいかって気がしてきました。
 小説を手に取れば言いたいことがいろいろなくはないけど、福井映画には、個人的にはなんだかすごく吹っ切れてしまいました。これを礎に邦画界がよりよい骨太アクションエンタメ映画を作っていってくださることを願うばかりでございます。

 「独身社会人映画ファンメーリングリスト」に「ローレライ」に関するなかなかおもしろいレビューが載っていたのでリンク。

※8/23追記
 「AVwatch」の「買っとけ!DVD」で「ローレライ」を取り上げてる。むー、プレミアム・エディションの特典映像、楽しそうだよう。でも、家にはPSPはない。