せまい脳内行ったり来たり/放浪編

もはや主にTwitterのまとめだったのに、2018年9月で途絶えている…。

タイーホ記念

 ↑不審かつ物騒なタイトルですみません。先月末、高まるセクサロイド疑惑に答えるためか、主人公によるヒロイン絞殺の暴挙に出た「愛の流刑地」ですが、その後延々、っちゅーかだらだらだらだら往生際の悪い主人公の右往左往を27回に渡り書き継いで、このたびようやく主人公が警察に連行される運びとなりました。それを記念して(?)、はたしてこの一ヶ月、ナベ爺は何を書きつづってしのいだかをまとめてみたいと思います。
 どっかでナベ爺、「異邦人」(もちろんカミュのですよ!)をやりたいとかヌカしてたそうで、だったらどの辺にその片鱗があるんだかね?ってことで。(「異邦人」読んでないんですが)
 なお、原本は手元にないので、まとめに際しては老舗にしてジャンル内では超有名blogの「にっけいしんぶん新聞」さまを参照させていただいております。
 長いです。こんなの、誰が読むんだろう、と思いつつ。

 なにしろロボットの疑いをかけられるくらいリアリティのないヒロインなので、前段で「ごわっ」の声と共に反応がなくなってもほんとに死んだかわからないと思った人多し。急展開に検索ワード「愛の流刑地」がTOPに躍り出る中、新章「風死す」がスタートしたのは8/27のことでした。

 一回目。悶えた後に冬香が動かなくなったので「そんなによかったのかー。でも、正気に戻ったらまた締めなくちゃいかんのか」と菊爺が鬱陶しさと愛おしさを感じていたところ、一向に冬香は目を覚まさず、腰を動かしても反応がない。もしや死んだのでは?とやっと思いつく菊爺。
 締めた相手の口元が軽く緩んで笑っている程度、というのはありなのでしょうか。
 二回目。菊爺は冬香が死んだとは思えず、頬を叩いたり「ふゆか…」と呼んでみたりする。冬香の喉仏の下が少しへこみ黒ずんでいるのを見ても、こんなことで死ぬわけがない、咳き込んだり苦んだ様子もなかったし、と脳内言い訳を続けるが、両足を開きっぱなしの姿に「こんな羞恥心のかけらもない姿を見せるのは冬香ではない」と死を認識。
 恥ずかしくて気を失ったフリしてんだろ→足おっぴろげは冬香に非ず、の思考回路が菊爺的。
 三回目。死んだと思ってもあきらめきれずに、菊爺冬香にディープキス。反応がないので今度は「ふゆか、ふゆか」と呼んだり揺すったりするものの、やはり動かない。明かりをつけても全く動かず、呆然と「死んでいる」と呟く菊爺。さっきまで「いい…」「首を絞めて…」「死ぬう」などと絶叫していたのに、と菊爺は冬香にしがみついて泣きじゃくる。
 四回目。一、二分泣いて正気に戻り、自分が殺人者になったことにようやく気づく菊爺。救急車を呼びかけるが、それで冬香は助かるのかと手を止める。すぐに死に気づかず余計な時間を費やしてしまったが、あまりのよさに気を失ったと勘違いしていたからなのだ。助かって欲しいが、何をしてよいかわからず、ともかく全裸の冬香を浴衣で覆う。
 本気で助かってほしけりゃ、何を置いても救急車を呼ぶよな…。
 五回目。青白い冬香の顔を見ながら、菊爺は救急車を呼ばねばとも思うが、連れ去られたら冬香は家族の元に戻り自分は二度と会えなくなる。お前とは別れたくない、冬香もあなたのものだと言っていた、「どうしたらいい…」とつぶやくものの、自分は一人生き残っている。菊爺はキッチンからナイフを持ってきてみる。
 えっちの最中このまま二人死んでもいいと思ったことが、この状況で思い浮かぶ菊爺の思考回路の不思議。
 六回目。ナイフを胸に当てるが刺しきれず、飛び降りや首つりも怖くてできない菊爺。迷ううちに冬香に会いたくなり、死体に話しかける。「死にたいけど死ねないんだ。俺だけ生きてていいの?誰より好きで、お前が死にたいと言ったから殺したんだ」と死体に言い訳垂れ流し。すると冬香の口元が軽く開きうなずいているようだ。
 勝手に死体にうなずかせる感覚もどうか?ですが、直後に「本当に殺す気はなんかなかった」。…どっちなんですか。
 七回目。恨んでいないどころか微笑んでいるような冬香に菊爺は安堵。浴衣をめくると白磁の人形のようで、もしかしたら全身に「接吻」し舐め回したら蘇るかもしれないと、冷え切った身体をえっちで重要な部分ピンポイントに舐めまくる。いくら舐めども秘所も冷えたままで、ついに菊爺も冬香の死を思い知る。
 判断基準はやっぱりソコかい…。
 八回目。ソコが死んでいるならあきらめるしかない。警察か119に連絡すべきだろうが、せめて今夜は冬香と一緒にいたいと思う菊爺。冬香もそれを望んでいるだろうと声をかけると、優しい「はい」という返事が聞こえた気がする。死んでから十分ほど経っただろうか、冬香の身体に寄り添って「明け方、冷えるからね」と言って菊爺は目を閉じる。
 物語は八月二日の深夜です。熱帯夜です。
 九回目。疲れのせいか、いつもの朝トイレに目覚めることもなく七時に起床した菊爺。冷たいままの冬香の喉に丸い痕を見つけ、愛しさに駆られたとはいえ、これほど激しく圧していた自分が信じられなくなる。泣きながら謝るが、苦しくなかった?と何度聞いても微笑んでいる冬香に、誰よりも激しく感じ燃えて逝ったのだと思えてくる。恨んでないね、と問いかけると、青ざめた唇がはいとうなずいたようである。
 延々と死体相手に自己正当化を続ける菊爺。
 十回目。記憶なのか夢なのか、菊爺は冬香と過ごした時間を走馬燈のように思い出す。花火の夜は燃え燃えだったと思ったあたりから息苦しくなり、首にまとわるものをふりほどこうとして目が覚める。どうやら自分の手で喉を抑えていたらしい。横たわる冬香の肌が濡れていて、泣いているかと思ったが自分の涙だった。
 人一人殺しておいて二度寝
 十一回目。菊爺はマットの下から昨夜の様子を録音していたボイスレコーダを見つけ出す。再生し始めると、えっちの最中の「滅茶苦茶にして」「死ぬう」「あなたに殺されたいの」という絶叫、夫に強引に迫られたことを語り「この躰は絶対誰にも許さないわ」と訴える冬香の声がダダ漏れ。「殺してぇ」の後に「ごわっ」が続き、菊爺は冬香の死が二人の圧倒的な愛の合作であることを確信する。
 死体の隣で自己正当化の証拠探し。
 十二回目。冬香は満足して逝ったのだと気が楽になる菊爺。七時半を過ぎた外は通勤のサラリーマンの姿が見える。菊爺は「おーい、ここに美しい女性が死んでいて、殺したのは、この俺だよ」と叫びたい衝動に駆られる。警察に連行される覚悟はしているが、どうするかは決めかねていた菊爺、冬香の荷物を整えねばとおもむろにバッグを漁る。愛のメールを交わしたケータイは子どもの写真が待受になっていた。
 ボイレコは早回しで聞きましたか。
 十三回目。三人の子どもの年をなのかなのかと推測する菊爺。自分は冬香に女の面ばかり求めそこしか見ようとしなかったが、子どもの母であったことをわかっていたら殺したりはしなかった、子どもたちに謝りたいと菊爺はようやく自分の罪深さに身震いする。「ふゆか、どうするの?」と尋ねても冬香は答えない。冬香も子どもを愛する母親だったのだと思うと、菊爺はなぜか心が安らぐ。
 子どもから母親を奪った罪悪感よりも、愛人が母の役割を果たしていたことに安らぐ男。
 十四回目。母と恋人が同居しているケータイをつらいと思いながらも、交信内容を夫に知られるのはイヤだとポケットにしまう菊爺。しかし、警察沙汰になったときに面倒だと気づいてバッグに戻す。代わりの思い出の品を探していると、ベッドサイドに菊爺がプレゼントしたハイヒールのネックレスが置いてあった。冬香は浴衣なのに、このネックレスをぶらさげてやってきたのだった。
 ネックレスは「ぶら下げる」ものらしいです。ケータイのメモリは消去方法がわからないみたいです。
 十五回目。ネックレスを思い出の品と決めて、「これだけは離さないから」と冬香に話しかける菊爺。冬香が喜んでいるのは間違いない。警察に連行される前に部屋を整理し持って行くものを用意しようと考えていると、まだ九時前なのに電話が鳴った。一人暮らしで滅多に会わない息子の高士が結婚の連絡をしてきたのだ。菊爺は気が抜ける。
 会社勤めの人が忙しい九時前になぜ電話。そして、年末に様子見に来てますが>高士。
 十六回目。高士は結婚相手に会って欲しいと言うが、今の菊爺はそれどころではない。別れた妻には会わせて同意も得ているが、菊爺の了承も得るべきだと思ったと高士は言う。母方の籍にいるから殺人犯の息子にはせずに済んだと菊爺はほっとする。彼女に会ってみたいのは山々だが、警察に行けばいつ出られるかわからない。菊爺のぞんざいな対応に高士は怒るが、菊爺はとにかく幸せにと言って電話を切る。
 籍がどうだろうと、父と息子であることには変わりはないでしょう。
 十七回目。息子を裏切ることになってしまった、離婚した妻も殺人犯の縁者にしてしまったと思う菊爺。まもなく塀の向こうに隔離されるのだと急に怖くなった菊爺は外の気配が恋しくなって、「すぐに戻ってくるからね」と冬香に声をかけ、Tシャツにズボン、サンダル履きの軽装で外に出る。
 十八回目。部屋にいる息苦しさに十時間ぶりに外出する菊爺。まだ八時過ぎだが日は高い。近所の鳩森神社まで歩くと昨夜冬香と花火を見たことが思い出される。ふと菊爺は、富士塚の麓に、いや他のどこでも自分しか知らない場所に人知れず冬香を埋められたらと考える。「やるなら、今だ」と富士塚に登り、汗かいて降りてくると冬香が呼んでいるような気がする。
 出かけた目的さえぶれぶれ。しかも何もしない。十七、十八回の存在意義がわかりません。
 十九回目。なんのために出かけたかわからないが、外は何の変わりもない。安堵して「お前を俺だけが知っているところに隠しておきたい」と冬香に触れる菊爺。すると躰が妙に硬く、皮膚が黒ずみ始めている。ベッドに接している下の方には痣があり、こんな硬くて黒ずんだ肌は冬香のものではないと菊爺は思う。
 死後硬直の早さは筋肉に左右されるそうです。筋肉質だと死後硬直も早い。(Mさん、ご教授ありがとう)
 二十回目。冬香の躰はすでに死後硬直が進んでおり、柔らかかった乳房も硬い。菊治はようやく冬香の死を実感した。駄目なら仕方がない。「子どもたちのところに帰る?」と菊爺は冬香に問いかける。
 きれいでなくなったら用済みかあ。
 二十一回目。腐敗が進む冬香に、菊爺は本格的に警察に届けなければと思う。美しかった冬香の手足や顔が崩れていくのが怖い。それに、子どもにはまだ美しい冬香の顔を見せねば、それが子どもの権利だと思いつつ、殺人者になる恐怖も捨てきれない。連絡していいかと冬香に問い、例によって同意を得た気がしてやっと110番に電話する。
 不審死だから、子どもが腐敗前に会うのは無理と思われ。
 二十二回目。菊爺の人を殺したという通報に、妙にあわてた対応をする警察。動かないようにという指示を終えると電話は切れ、殺人者としての勤めは果たしたと菊爺は安堵する。警察が来たら二度と会えないが「一生かけて忘れない」「冬香のあたたかさも優しさも、いっぱいいっぱい快くなったことも」俺の躰にしまい込んでおくからと冬香に別れを言う菊爺。けたたましい音と共に、パトカーがマンションの前に止まる。
 今までもヘンな言い回しがいっぱいあったんですが、サンプルとして「」で引用。
 二十三回目。激しくドアが叩かれ、菊爺が開けると警官が二人雪崩れ込んでくる。菊爺に尋ねて寝室に入った警官は、死体の様子を確認する。職務質問を受けた菊爺は名前や年齢を淡々と答えたが、職業の説明ができない。冬香の身元を問われ、殺すほど愛し合っていたのに、ケータイの番号やメールアドレス、おおざっぱな住所、名前くらいしか菊爺にはわからない。
 殺したのか、殺す気がなかったのか、回が進んでもわからない。
 二十四回目。どうして殺ったのか?と問われ、手で喉をと答えつつ戸惑う菊爺。喉を押しはしたが殺す気はなかった。考え込んでいると鑑識を連れて他の警官が入ってくる。改めて刑事に名前や年齢、殺した理由を問われるが、好きだからに決まっているがわかってもらえるかと菊爺は言い淀む。刑事は苛立ったように冬香との関係を聞く。
 こんなアホが相手では、刑事さんも大変です。
 二十五回目。狂おしいほど愛し合った関係を説明しようもなく菊爺が「好きでした…」と答えると、愛人関係だねと刑事が言う。知り合った経緯を聞かれ、さらに殺したのが菊爺であることを確認される。続いて寝室に移り、死体を指さしている姿を写真に撮られる。犯行を認めた証拠だと言うが、そんなことのために死んだ冬香と写真を撮られるのかと菊治は唇を噛む。
 殺人者のくせに横柄です。しかも愛人関係なんて俗な言葉はイヤだそうです。
 二十六回目。警察に行く準備をしてくれと言われ、書斎に入る菊爺。警官にアドバイスされ、洗面具と着替え、現金をセカンドバッグに詰め、思い出のボイスレコーダーは取り上げられると思い、代わりにハイヒールのネックレスを入れる。寝室で鑑識が全裸の冬香の写真を撮っているのに気づき、「何をするんだ」とベッドに駆け寄ろうとするが警官に出口へと連れ去られ、署に行くまでおとなしくしていろと命令される。
 君があの最中に殺したから、冬香はまっぱで写真を撮られてるわけで。
 二十七回目。菊爺は警官に逆らう気持ちを抑え、裁判で愛するがあまり力が入りすぎたのだと堂々と言ってやると決心する。昨夜は冬香と花火を見たのに、今は殺人犯として連行される自分を不思議に思う菊爺。マンションの入り口には十数人が集まっており、警官がタオルで菊爺の顔を覆ってくれる。怯え、心配したような管理人に軽くうなずいて、菊治はパトカーに乗る。
 管理人も自分の仕事場で殺人なんて迷惑でしょうに…。

 文中、同じ表現が何度も出てきたり、言い回しが明らかに変なところがありますが、そういう部分はなるべく原文に合わせたものです。また、前後の回で食い違いがあるのも原文の通りです。
 というわけで、全27回の連載をなるべくコンパクトにまとめてみたのですが、けっこう長くなってしまいました。書けば書くほど主人公が矮小なジコチューであることが浮き彫りになるばかりで、作者が小心者の卑劣漢をリアルに描き出したいと考えているのなら成功していると言えなくもないでしょうが、ナベ爺は主人公=自分目線の人のようなので(というか、三人称のはずなのに、地の文がモロ主人公の内面語りの嵐)、菊爺を駄目男として書いてるわけじゃないみたいです。混乱はしているものの、あくまで最愛の女を亡くした悲劇の男のつもりのよう。
 じゃー、目論み大失敗じゃん!
 こんな文章で一ヶ月どのくらいの原稿料貰ってるのかなあ…。
 単行本化の際は、この章残るのかなあ…。