せまい脳内行ったり来たり/放浪編

もはや主にTwitterのまとめだったのに、2018年9月で途絶えている…。

「緑の我が家」、読了

Amazon.co.jp:本: 緑の我が家―Home、Green Home講談社X文庫―ホワイトハート
 小野不由美のホラーなんですが。
 「過ぎる十七の春」もそうだし、特に「屍鬼」を読んでても感じたのは、私にとって小野不由美のホラーは全然ホラーじゃない。怖くないんです。おもしろくないと言ってるんじゃないです。この距離感がうまく説明しづらい…。
 「緑の我が家」の舞台はビルに挟まれた陽のささない狭い路地の向こうにある「グリーンホーム」という賃貸マンション。そこに越してきた高校生の主人公はのっけから建物とその周辺に何とも言えないいやな雰囲気を感じ続ける、それが怪異の始まりで、という筋立て。ホラーっ気満々なスタートだし、その後もまんべんなくきちんと恐ろしげでいやなことが起こり続けるんだけど、私は全然怖くない。
 小野不由美の文体がきっちりと整然と影なく感じるのです。得体のしれない恐ろしげなものがざわざわした闇の中に潜んでる、割りきれなさ・後味の悪さがないというか。恐ろしかったりやりきれなかったりするのはむしろ生きている人の姿で、怪異そのものは非常に理知的に割りきれる。その理由が悪霊や妖怪(吸血鬼を妖怪と呼んでいいなら)であったとしても、原因がちゃんと提示され、事件はきれいに収束する、そういうすっきり感が私の中の「ホラー」のイメージと合致しないのだろうなあ。
 怖いのは幽霊じゃなくて人間の方よ、というのも、ホラーが持つ一つのテーマではあるんだけど。

 私にとっての小野不由美のホラーは、サスペンスものみたいな感じかな。主人公達が心情的に追い込まれていきながら、怪異の謎に次第に近づいていく、その過程のドキドキを味わう本です。
 「ゴーストハント」もコミックスを三巻まで読んだけど、悪霊わしわし出てくるけど怖くないんだよなー。絵もがんばって不気味に描いてあるのに。