せまい脳内行ったり来たり/放浪編

もはや主にTwitterのまとめだったのに、2018年9月で途絶えている…。

「アラビアの夜の種族」、読了

アラビアの夜の種族〈1〉
(↑一巻の書影のみ)
 何ヶ月かかってんだ、こらあっ。
 と自分をけ倒したくなる。なんで三冊分冊を読むのに四ヶ月も費やさねばならんのだ>自分。てーか、それでよくも物語の冒頭部分を憶えていたな。(呆れ)
 取りあえず憶えてました。
 えーと。好みの話かと言うと違いました。カイロに現実に押し寄せるナポレオン軍。それに立ち向かう力を持つ奇跡の書を作るという一群。夜に住まうという物語女が紡ぎだす奇想天外な物語。という現実と空想が交互に配置された構成は、そのうちメタフィクション化するのかと思わせるんだけど、そうじゃありませんでした。意外と現実的なオチ方だった。最近、話の作りを穿って見すぎ>自分。
 そういう作りなんで、特にズームルッドという物語女の語る部分の語り口になじめないと読むのがつらい。「現実」にあたるナポレオン軍の進行を描く部分もそれっぽい文体だし。
 で、私はこの辺の意図的にくせの強い文体はちと苦手だなーと思いながら読んだんですが、普段だったらこの厚みで文体に距離置いたら途中で投げることも多々あるのに、これはちゃんと読破した。いろんな意味で、「で、この先どうなるの?」と思わせられる部分が多くて、その興味に引っぱられて最後まで読みました。この段階ですでに、この作者すごい。(<オレ、えらそう)文体合わない本、しかもこんな分厚いのを読み切らせるなんて尋常じゃないです。
 いろんな意味で罠満載。
 で、うわさには聞いてたけど、この話の、特に伝承部分の元ネタがウィザードリィのノベライズ用に準備されていたというのが(笑)。阿房宮なる地下迷宮の作りというか、最後にラスボス配置なあたりとか言われてみればダンジョンRPGそのものなんだけど、ゲーム知らない人には文学の香り高い小説そのものとしか思えず読めてしまいます、たぶん。
 むしろ若いゲーマーでライトノベルしか読んだことない人には取っつきにくい本かも。ファラーとサフィアーンなんかは、801な人などにもウケそうなキャラなんだけども。